isyumi_netブログ

isyumi_netがプログラミングのこととかを書くブログ

米澤穂信「栞と嘘の季節」と恩田陸「六番目の小夜子」に共通するワクワクする要素

『栞と嘘の季節』の文庫版が発売されたのでおすすめしたい。本当に面白い小説だ。

僕は『栞と嘘の季節』と、恩田陸の『六番目の小夜子』が学園サスペンス小説の二大傑作だと思っている。この二つには共通する、読者にとって美味しい要素があるので比較した。

 

 

 

 

◆『六番目の小夜子』のあらすじ

六番目の小夜子ファンタジー・オカルト風味が強い。どんな話かというと

3年に一度“サヨコ”役が現れ、在校生にゲームを仕掛けていく高校が舞台。

友達同士の唐沢由紀夫と関根秋は、美少女津村沙世子が今年のサヨコだと考え、彼女を調査する。

調査の過程でサヨコゲームの歴史が判明。津村沙世子とはかつての生徒で、非業の死を遂げていた。このゲームはその子に祟られないようにするための儀式だったのだ。さて、現代の津村沙世子はただの一サヨコなのか、あるいは亡くなった津村沙世子本人(生き霊?)かもしれない

◆『栞と嘘の季節』のあらすじ

こちらはより純度の高いミステリ小説。どんな話かというと

ある高校にトリカブトを押し花にした栞が出回る。トリカブトは猛毒であり、この栞を手に入れた人は簡単に誰かを殺せる。

図書委員で仲良しの堀川次郎と松倉詩門という二人の男の子が、その栞の配り手を探す。

その過程で、美少女瀬野が事件の鍵を握っていることがわかり、二人は瀬野と相対する。

◆ 二つの小説の共通構造

この二つの小説の構造はとてもよく似ている。

大事件

まず、学校全体を巻き込んだ大事件が起きること。

『栞と嘘の季節』では毒が使われ、なんやかんや数十人が倒れる。

六番目の小夜子』では文化祭の日、サヨコにちなんだ出し物の最中に竜巻が起こり大パニックになる。

これは読者にとって、非日常的な出来事が起こってほしいという欲望を満たしてくれる展開だ。

立ち位置

もちろん、ただ混乱に振り回されるだけではいけない。みんなが困っていることに対して、「もっとも真相に肉薄しているのは俺だ」というポジションを確保しなければならない。自尊心をくすぐってくる。

美少女と対立・接近

次に、黒幕と思われる相手が美少女という点。事件の真相とはその美少女の正体なのだ。どちらの作品も物語の中盤で、二人の男の子はミステリアスな美少女と迫力満点の対決をする。

友情青春物語

第四に、友達グループものの青春小説としても秀逸であること。

六番目の小夜子』では、唐沢由紀夫は花宮雅子という少女と両思いの関係にある。その花宮雅子が津村沙世子に懐いてしまう。唐沢は「変な奴と絡むなよ」と思いつつも、結局唐沢由紀夫・花宮雅子・関根秋・津村沙世子の四人で行動することが増え、互いに友情を深めていく。物語の構造は[唐沢&関根]VS[津村沙世子]で探り合いつつ、起こっているエピソードは四人のかけがえのない青春の一ページなのだ。

『栞と嘘の季節』も近しい構図だ。瀬野さんとは対立しているのに、場面としては三人の協力関係で進む。もう一人の重要人物として東谷さんという女の子が登場する。堀川と松倉とは元々仲が悪いものの、彼女も事件解決に大きな役割を果たす。男2女2のグループの物語である点も共通している。

まとめ

六番目の小夜子』と『栞と嘘の季節』は、

  1. 主人公は仲良しの男の子二人
  2. 学校で大事件が起こり
  3. 主人公たちはその調査をし
  4. 鍵になっている美少女を詮索し
  5. 美少女と敵対しながらも近い関係になり
  6. 協力して問題に取り組み絆を深め
  7. 他の生徒が知らない真相に近づいていく

という“おいしい”要素がぎゅっと詰め込まれている。

まさに「自分の高校生活がこうだったらいいのにな」と思わせてくれる作品である。

ぜひこの二作を読んでみてほしい。