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2023のBest本

少女事案

 

 

高校生の男女が、最近起こっている連続殺人事件と対峙しながら、過去に自分たちが巻き込まれた誘拐事件の清算を目指す話。

主人公である幸路君とその幼馴染である月子の二人は、過去の事件のトラウマにより難しい境遇にある。そんな二人は殺人犯に狙われている文香という幼女を保護することになる。どうやら過去と現在の二つの事件は深く関係しているようだ。同一犯か、あるいは模倣犯か。幸路と月子は文香を匿いつつ、もう一度過去の事件に向き合うことになる。

話の筋としては『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』に近い。しかしどちらかといえば全盛期の富士見ミステリのノリに近いとも思う。暴力と性の生臭さ。そんな世界をドライブする軽薄な男の子。さよならトロイメライとかね。僕はだいぶ好きな感じ。

世界の果てのランダム・ウォーカーの作者の新作という意味でも安定感抜群。今年の最面白小説だと思う。

 

 

 

 

でぃすぺる

 

 

小学生3人からなる少年探偵団的な組織が、町の七不思議の解明を目指す中で、巨大な陰謀に巻き込まれる話。

探偵団メンバーのサツキは、前年に殺人事件で従姉であるマリを亡くしていた。マリのダイイングメッセージ的なモノによると、七不思議がこの事件に関係しているようだ。マリの死はオカルトなのか人為的事件なのか、という観点から調査を始める3人。

この話の面白さは、七不思議と殺人事件の真相が気になるという事が半分、3人の関係が成熟していく様を共に喜びたくなるという事が半分。

それにしても、小学生リーダー的女子というキャラクターっていいよな。類例を挙げるなら雨を告げる漂流団地の夏芽などが好キャラクターだろう。大人が主人公の物語には出せない面白さがある。中学生にもなったら男女が本気でケンカしなくなるからかな。

 

 

十戒

 

 

絶海の孤島で殺人事件が起こるという、クローズドサークル物のミステリ。最初の殺人事件の直後に犯人から「決して犯人を捜さないように」とお告げがある。曰く、この殺人は皆を守るために必要なことであり、犯人探しをしなければこれ以上は手出しをしないので大人しくしているように、とのこと。

そこから始まる「突っ込んだら負け」の生活。犯人が特定できないように全員で協力しつつ救助を待つ。誰かが疑われ始めたらさりげなく庇いあう。かなり滑稽。でも確実にこの中に犯人がいるという人狼的不気味さ。

面白かったのは、犯人を明かさずに犯人の証拠隠滅に協力し合うアルゴリズムを駆使するところ。世界でもっとも強力な9のアルゴリズムを読んだ時の興奮を思い出した。

今年のベストミステリー小説だと思う。

 

 

「若者の読書離れ」というウソ

 

 

小説ではなく新書。

ライトノベルは若者の読み物とは言えなくなっている。その分、児童書が充実している。最近の中高生は児童書を読んでいる。という話。

ヨモツイクサ

 

 

いわゆる動物パニックモノ。熊退治に向かったハンターが、熊より恐ろしい謎の生き物に襲われる。

ラスト一気の伏線回収で真相が明らかになるところが凄い。ミステリ小説として優れている。ただ、動物パニックものにありがちな、作者が話を盛り上げ得るためにあえて登場させる無能キャラはかなり気になったので何とかしてほしい。